大判例

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東京高等裁判所 昭和31年(ネ)2592号・昭31年(ネ)2814号 判決

被控訴人が訴外渡辺文子に対する横浜地方裁判所昭和三十一年(ワ)第二六号家屋明渡請求事件の昭和三十一年五月十二日付調停調書の執行力ある正本にもとづき、横浜地方裁判所執行吏に委任して同年六月二十九日別紙目録記載の家屋に対して明渡の強制執行に着手したことは当事者間に争ない。

これに対し控訴人は、右家屋は控訴人において昭和三十年一月二十八日以来右渡辺から賃料一カ月金三千五百円毎月末日支払の約で期間の定めなく賃借して占有中のものであるとして右執行の排除を求めるものであり、右目的物の引渡を妨げる権利として主張するのはその占有権であることは弁論の全趣旨からこれをうかがい得べく、控訴人が右日時以来本件建物を占有中であることは被控訴人の認めるところである。しからば被控訴人は、控訴人の占有権を有する本件家屋については、右渡辺に対する債務名義によつてはこれが明渡の強制執行をなし得べきものでないことは明らかである。

被控訴人は控訴人の権利が被控訴人に対抗し得ないことを主張する。しかし控訴人の主張する権利は占有権でありこれは占有という事実自体によつて対抗力を有するものであるから、その占有のもとずく本権たる賃借権が被控訴人に対抗し得ないとしても(被控訴人の本件物件についての所有権取得の対抗力はその仮登記の順位にさかのぼるから右仮登記以後になされた本件賃借権の設定はこれをもつて被控訴人に対抗し得ない。このことは右仮登記が所有権移転請求権保全の仮登記であつても変りはない)控訴人は本件執行に対し第三者異議を主張することを妨げない。被控訴人としては控訴人の本件家屋に関する占有を排除するためには控訴人にたいする明渡請求について、よつてもつて強制執行をなし得べき債務名義の存することを要する。かかる明渡の請求に対しては控訴人の前記賃借権は被控訴人に対しその占有の正権原として対抗し得ないということになるべきものであつて本件反訴はまさにその目的のためのものであると解せられる。すなわちこの点の被控訴人の抗弁は理由がない。また控訴人の賃借権は通謀虚偽表示の賃貸借にもとづくとの抗弁の理由のないこと前同様である。

しからば被控訴人が渡辺に対する前記債務名義にもとずく本件執行は控訴人のために許すべからざること明らかであり、右執行の排除を求める控訴人の本訴請求は理由がある。これと異なる原判決は失当であるからこれを取り消し訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九十六条、第八十九条を適用して主文第一ないし第三項のとおり判決する。

(藤江 谷口 浅沼)

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